体外受精における男性不妊への人工知能(AI)
アプローチ:マッピングレビュー

男性不妊に対するAI応用の現状とその有用性を示した論文です。

Artificial intelligence (AI) approaches to male infertility in IVF: a mapping review

https://doi.org/10.1186/s40001-025-02479-6

臨床推論

要 旨

男性不妊は不妊症全体の20~30%に関与しており、従来の診断および治療法には精度や一貫性に限界があります。人工知能(AI)は、精度と効率を高めることで、体外受精(IVF)における男性不妊の管理に革新をもたらす可能性があります。

目 的

本研究の目的は、男性不妊におけるAIの応用状況を明らかにし、IVFの文脈におけるその性能を評価し、研究のギャップを特定するとともに、臨床への導入に向けた戦略を提案することです。

方 法

PubMed、Scopus、IEEE、Web of Scienceを用いて、2024年までに発表された14件の研究を対象としたマッピングレビューを実施しました。PRISMAガイドラインに従い、「IVF」「AI」「精子分析」などのキーワードで文献のタイトルおよび抄録を系統的に検索しました。2名の研究者が独立して文献を選別し、AI技術、サンプルサイズ、アウトカムに関するデータを抽出しました。内容分析によってAIの応用分野を分類し、意見の相違は合意によって解決しました。

結 果

AIは、サポートベクターマシン(SVM)、多層パーセプトロン(MLP)、深層ニューラルネットワーク(DNN)などの手法を用いて、6つの主要な分野で応用されていました。具体的には、精子形態(例:SVMによりAUC 88.59%、精子1400検体)、精子運動性(例:SVMにより正確度89.9%、精子2817検体)、非閉塞性無精子症(NOA)における精子回収(例:勾配ブースティング決定木によりAUC 0.807、感度91%、患者119名)などが挙げられます。さらに、IVF成功予測(例:ランダムフォレストによりAUC 84.23%、患者486名)や、精子DNA断片化の評価にも応用されていました。研究数は2021年以降に急増しており、14件中8件(57%)が2021年から2023年に発表されていました。

結 論

AIは、男性不妊の診断精度および治療成績の向上に貢献する可能性があります。今後は、多施設共同による検証試験や、AIを活用したIVF・ICSIにおける精子選別法の確立、さらには臨床での信頼性を担保するための標準化が求められます。また、データプライバシーなどの倫理的課題に対応することにより、AIは世界的にIVFの成功率向上に寄与できると考えられます。