単一誘導ホルター心電図にAIを応用した
持続性心室性不整脈の近未来予測

ホルター心電図の動的特徴をAIで解析し、持続性心室頻拍の発症直前リスク予測を実現可能としたことを示した論文です。

Near-term prediction of sustained ventricular arrhythmias applying artificial intelligence to single-lead ambulatory electrocardiogram

https://doi.org/10.1038/s41586-025-08869-4

臨床推論

背景と目的

生命を脅かす心室性不整脈を近未来(数日以内)に正確に予測できれば、突然心停止や突然死を防ぐための予防的介入が可能になります。単一誘導のホルター心電図にディープラーニングを適用することで、持続性心室頻拍(VT)発症リスクが高まっている個人を特定できる可能性があります。

方 法

この後ろ向き研究では、6か国から収集された247,254件の14日間ホルター心電図記録を解析しました。最初の24時間のデータを用いて、続く13日間に持続性VTが発生する可能性のある患者をディープラーニングモデルで予測しました。開発データセットは183,177件、内部検証データセットは43,580件、外部検証データセットは20,497件で構成されています。また、Saliency mapping を用いて、モデルのリスク予測に影響を与える特徴を可視化しました。

結 果

全記録のうち1,104件(0.5%)で持続性心室性不整脈が認められました。内部検証と外部検証の両方で、モデルはそれぞれAUROC 0.957(95%CI 0.943–0.971)、**AUROC 0.948(95%CI 0.926–0.967)**を達成しました。特異度を97.0%に固定した場合、感度は内部で70.6%、外部で66.1%に達しました。さらに、180拍/分以上の高速持続性VTに対しては、内部80.7%、外部81.1%の精度で発症予測に成功し、心室細動(VF)に移行したVTの90%も正確に予測できました。Saliency maps解析では、PVC負荷や早期脱分極タイミングがVTリスクの重要な予測因子であることが示唆されました。

結 論

単一誘導ホルター心電図とディープラーニングを組み合わせた新たなモデルは、近未来の心室性不整脈リスクを高精度で特定可能であることが示されました。また、早期脱分極パターンが心室性不整脈発症の潜在的決定因子である可能性も浮かび上がりました。