能動型血管内ナビゲーションのための
モデル縮約を用いた意思決定支援ツールの開発

形状記憶合金を用いた能動型ガイドワイヤを活用し、左総頸動脈経由で脳血管領域へのナビゲーションを行うためのリアルタイム予測手法を示した論文です。

Development of decision support tools by model order reduction for active endovascular navigation

https://doi.org/10.1016/j.artmed.2025.103080

手術支援

要 旨

血管内治療は、細長いデバイスを病変部位まで誘導することで、血管疾患に対する低侵襲な治療を可能にします。しかし、**上行大動脈分枝(Supra-Aortic Trunks:SATs)**のような経路は、その解剖学的な複雑さにより、ナビゲーションが困難となる場合があります。こうした難易度の高い部位へのカテーテルアクセスを改善するために、形状記憶合金(Shape Memory Alloy)を用いた能動型ガイドワイヤが開発されました。
本研究では、このガイドワイヤおよび関連するカテーテルを用いて、左総頸動脈を経由した脳血管領域へのナビゲーションに焦点を当てています。これまでの研究では、患者ごとの大動脈モデルを用い、大動脈弓から左総頸動脈の分岐部までのナビゲーションを有限要素法(Finite Element Method)によって数値シミュレーションしてきました。しかしながら、これらの計算は非常に高負荷であり、リアルタイムでのナビゲーション支援には適さないという課題がありました。この課題を解決するために、本研究では、高精度な有限要素解析に基づいたリアルタイム計算を可能にする数値チャート(numerical charts)を開発しました。これらのチャートは、以下の2つを予測することができます:
能動型ガイドワイヤの挙動
特定の解剖学的構造におけるガイドワイヤおよびカテーテルのナビゲーション挙動
これらの予測は、ガイドワイヤの制御パラメータおよびナビゲーション条件に基づいて行われます。
本手法では、高次適合一般分解法(High Order Proper Generalized Decomposition: HOPGD)を用いることで、初期の高精度な解析回数を抑えながら、誤差5%未満・応答時間1ミリ秒(10⁻³秒)という精度と速度を兼ね備えたリアルタイム予測を実現しました。これらの成果は、血管内治療の精度と安全性の向上に寄与する臨床応用技術の開発につながるものであり、脳血管インターベンション分野のさらなる発展にも貢献する可能性があります。