AIによるマルチモーダルデータを活用した
認知症の鑑別診断
人口統計、個人および家族の病歴、薬物使用、神経心理学的評価、機能的評価、マルチモーダル神経画像など、多岐にわたるデータを統合し、AIモデルを活用して認知症の原因を特定し、高精度で分類・診断を行う手法を示した論文です。
AI-based differential diagnosis of dementia etiologies on multimodal data
要 旨
認知症の鑑別診断は、異なる病因間で症状が重複するため神経学において依然として課題となっています。しかし、早期かつ個別化された治療戦略を策定するためには、正確な診断が不可欠です。本研究では、人工知能(AI)モデルを活用し、認知症の原因を特定する手法を提案します。本モデルは、人口統計データ、個人および家族の病歴、薬剤使用状況、神経心理学的評価、機能評価、および多モーダル神経画像データなど、幅広い情報を統合して解析を行います。
本研究では、9つの独立した地理的に多様なデータセットにわたる51,269名の参加者データを用いて、認知症の10種類の異なる病因を特定しました。本モデルは、診断結果を類似の治療戦略と照合することで、データが不完全な場合でも高い予測精度を維持できます。その結果、正常認知、軽度認知障害(MCI)、および認知症の分類において、モデルのマイクロ平均ROC曲線下面積(AUROC)は0.94を達成しました。また、認知症の病因を鑑別する際のマイクロ平均AUROCは0.96となりました。
さらに、本モデルは混合型認知症の症例にも対応でき、2つの共存する病理を識別する際の平均AUROCは0.78を記録しました。無作為に選ばれた100例のサブセットにおいて、本モデルを活用した神経科医の診断精度は、神経科医単独の評価と比較して26.25%向上しました。加えて、本モデルの予測結果はバイオマーカー証拠と一致し、異なるタンパク質異常との関連性が剖検結果を通じて確認されました。