AIを用いた外来での心電図記録の
医師への直接報告
AI(DeepRhythmAI)を用いた外来での心電図記録の医師への直接報告が、従来の技師による解析と比較して重篤な不整脈の見逃しを大幅に減少させることを示した論文です。
Artificial intelligence for direct-to-physician reporting of ambulatory electrocardiography
目 的
近年、外来心電図(ECG)技術の発展により、大量の心電図データが生成されるようになり、現在は人間の技師による解析が必要とされています。本研究では、外来心電図データの医師への直接報告を目的とした人工知能(AI)アルゴリズムの有用性を検証しました。14,606件の外来心電図記録(平均記録期間 14 ± 10日)に対して、認定心電図技師(167名)およびDeepRhythmAIと呼ばれるアンサンブル型AIモデルにより、拍動ごとのラベリングが実施されました。AIモデルと技師の解析性能を比較するため、AIモデルまたは技師によって検出されたリズムイベントの中から無作為に5,235件(うち2,236件は重篤な不整脈)を抽出し、循環器専門医からなる17の専門家パネルのいずれかにより評価が行われました。重篤な不整脈を識別するAIモデルの感度は平均98.6%(95%信頼区間:97.7–99.4)であり、技師による感度80.3%(95%信頼区間:77.3–83.3%)と比較して有意に高い結果となりました。偽陰性の発生率は、AIモデルでは1,000人あたり3.2例、技師では1,000人あたり44.3例と観察され、診断見逃しの相対リスクは技師で14.1倍(95%信頼区間:10.4–19.0)高いことが示されました。一方で、偽陽性イベント率はAIモデルの方が高く(中央値12件〔四分位範囲6–74〕/1,000患者日)、技師では中央値5件〔四分位範囲2–153〕/1,000患者日でした。
以上より、DeepRhythmAIモデルは重篤な不整脈に対して高い陰性的中率を示し、偽陰性結果を大幅に低減できる一方で、偽陽性の増加は軽度にとどまることが明らかとなりました。AIによる単独解析により、医師への直接報告が可能となれば、外来心電図モニタリングを必要とする患者において、医療コストの削減、ケアへのアクセス改善、ならびにアウトカム向上に寄与する可能性が示唆されます。
気象データを用いた機械学習による急性虚血性脳卒中の1日入院件数予測
気象データを活用した機械学習モデルが急性虚血性脳卒中の入院数予測を可能にし、病院運営や医療提供の効率化に貢献する可能性があることを示した論文です。
Machine learning-based forecasting of daily acute ischemic stroke admissions using weather data
要 旨
気候危機は、医療における気象ベースの予測分析の必要性を強調しており、実際に気象因子は世界の脳卒中負担の約11%に寄与しています。そこで我々は、地域気象データを用いた機械学習モデルを開発し、急性虚血性脳卒中(AIS)の1日あたりの入院数を予測しました。ドイツ・マンハイム大学医療センター(人口約60万人の診療圏を有する三次医療機関)に2015年から2021年の間に入院したAIS患者7,914名のデータを、ドイツ気象庁の気象データと地理的に対応させました。ポアソン回帰、ブーステッド一般化加法モデル、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、エクストリーム・グラディエント・ブースティング(XGB)などのアルゴリズムを用いて、時間階層化ネスト交差検証の枠組みで評価を行いました。その結果、XGBが最も高い予測精度を示し、平均絶対誤差は1日あたり1.21症例でした。
予測因子としては、気圧の最大値が最も重要であり、気温には双峰性の関係が認められました。寒冷および高温ストレス日(最低気温が−2°C未満、体感温度が−1.4°C未満、または最低気温が7日前に15°C超)や強風(風速14m/s超)は、脳卒中入院の増加と関連していました。本研究で提示した予測モデルは、リアルタイムでの病院運営計画や、効果的な医療提供、さらには多様な気象関連疾患の予測にも応用可能な汎用的枠組みとなる可能性があります。