乳がん集団検診における全国的なAIの適用と
その実臨床での応用

AI支援による二重読影が、乳がんの発見率を高めつつ再検査率を維持し、マンモグラフィ検診の精度向上に寄与する可能性を示した論文です。

Nationwide real-world implementation of AI for cancer detection in population-based mammography screening

https://doi.org/10.1038/s41591-024-03408-6

画像診断

要 旨

マンモグラフィ検診における人工知能(AI)の導入は、後ろ向きの評価では有望な結果を示していますが、前向きの研究はほとんど存在しません。PRAIMは、ドイツの12の施設で実施された観察研究で、AI支援による二重読影と、標準的なAIなしの二重読影を比較する非劣性の実装研究です。本研究では、放射線科医はAIシステムの使用を任意で選択しました。2021年7月から2023年2月の期間中に、総計463,094人の女性が検診を受け、そのうち260,739人がAIサポートを利用し、119人の放射線科医が関与しました。AI支援を受けたグループでは、乳がんの発見率が1,000人あたり6.7件であり、対照群の1,000人あたり5.7件に比べて17.6%(95%信頼区間:+5.7%、+30.8%)高く、統計的に優れた結果が得られました。AI群の再検査率は1,000人あたり37.4件で、対照群の38.3件より低く、非劣性が確認されました(パーセント差:−2.5%(−6.5%、+1.7%))。再検査の陽性的中率(PPV)は、AI群で17.9%、対照群で14.9%でした。生検の陽性的中率は、AI群で64.5%、対照群で59.2%でした。標準的な二重読影と比較して、AI支援による二重読影は乳がんの発見率を高め、再検査率には影響を与えず、マンモグラフィ検診の指標を改善できる可能性を強く示しています。


機械学習を用いた顔面麻痺の自動評価ツールの開発:AIによる動画解析の精度向上

顔面麻痺の重症度を定量的に評価できるAIモデルを開発と精度向上を示した研究論文です。

Fine-Tuning on AI-Driven Video Analysis through Machine Learning: Development of an Automated Evaluation Tool of Facial Palsy

https://doi.org/10.1097/PRS.0000000000011924

画像診断

要 旨

顔面麻痺の重症度を定量的かつ客観的に評価するツールの確立は、臨床医や研究者にとって長年の課題でした。人工知能(AI)を活用した動画解析は、その解決策として有望と考えられます。本研究では、顔面の68か所のランドマーク(キーポイント)を検出する「顔面キーポイント検出」の技術を導入しました。しかし、既存のモデルは主に健常者の画像を用いて構築されていたため、顔面麻痺のような非対称な顔貌に対しては予測精度が低いと考えられました。既存モデルを顔面麻痺患者30名の動画に適用してみたところ、質的評価から精度不足が明らかとなりました。患者の顔を対称的と誤認識したり、まぶたの閉鎖を検出できなかったりする傾向が見られたため、著者らはアノテーション(手動によるラベル付け)による機械学習の工程、すなわちファインチューニングを通じてモデルの改善を試みました。

方 法

196人の顔面麻痺患者の動画から抽出した計1181枚の画像を学習に用い、それぞれに68か所のキーポイントを手動で修正(アノテーション)しました。修正したデータは、2段のアワーグラスネットワークとチャネル集約ブロックを組み合わせた構造を用いて、既存のモデルに統合しました。

結 論

アノテーション後のモデルでは、正規化平均誤差(Normalized Mean Error:NME)が0.026から0.018に改善しました。さらに、各顔面ユニットにおけるキーポイント検出の質的評価でも精度向上が確認されました。

結 果

アノテーションのばらつき(複数人や同一人物内の差)を厳密に管理することにより、モデルのファインチューニングが成功しました。新しいモデルは、顔面麻痺の客観的評価を可能にする有望な手法となると考えられます。